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「何回も悩むのはアンタの悪い癖。でもね、そうやって悩みながら選んだ選択だからこそ、きっといい方向に向かうわ。アンタに付いて行くかなんて質問、意味があるのかしら」
早く気付いてよ。私はもう、決めてるんだから。そんな質問の答えなんて、ちゃんと分かっててよ。分かってて聞いてるんだとしたら、コイツはとんでもなく、意地悪だ。
「少しは強引に、命令でもしてみたら?」
これが私の精一杯。私は笑えているだろうか。ひょっとしたらまた、生意気な表情になっているかもしれないけれど、大丈夫だ。私がこう言えば、レインは絶対返してくれる。
「エル」
「なによ」
「気が変わった、俺はお前を無理矢理にでも連れて行く。だからお前も、諦めて俺らに付いて来い」
「……仕方ないわね」
その言葉が、欲しかった。私を強引に無理矢理に連れ去ってくれるのは、アンタであって欲しかったから。やっぱり少し遅いけれど、それもやっぱりコイツがコイツである証拠のようなものだから、今回だけは見逃してあげることにしよう。
私は立ち上がる。剣を頼りに立ち上がる。守られっぱなしなんて嫌だ。素直に守られてなんてやるもんか。目一杯に無茶をして、アイツを困らせてやる。
「それとな、エル」
弾けるような放電音を奏でながら、レインは言う。格好良く飛び出すこともせず、まだ私に話しかけてくる。
「誰かに守られなきゃ、誰かを守ることなんて出来ない。守られた事の無い奴なんて強くなれない。だからもう、妙なことで悩むな」
……なんでアンタは、そんなところにだけ敏感なのかしらね。隠そうとしていた自分が馬鹿みたいだ。本当にもう、嫌になる。
さあ、始めようかと。そんなことを言いながらレインは踏み出す。フェイも、スイも、ミズキもカイルも笑った。何故か傷だらけの皆に答えるように、私は両足でしっかりと立ち、笑い返してみたりした。
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