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「私は、どうすればいいの……?」
「……下を向くな、胸を張れ。弱音を吐かず勝気な目をして睨んでろ。卑怯を許さず燻る心のままに否定して、思うがままに無茶をしろ。素直になんてならなくていい。そんなことをしなくても、どうせお前は優しさを垣間見せる。ただそれだけで、俺はお前から目が離せない」
そんなことを言ってのけるコイツに、顔を背けたくなる私はしかし、気付いた。とんでもなく頬を紅潮させている、目の前の締まらない男の子。こういうところは、変わらないんだ。
「だけど」
肩に手を置かれ、向き合う形に離される。憎たらしいほど綺麗な目に私を映し、意外と無骨な手のひらは私を離さず、健康な色の唇は私へと、恥ずかしがること無くこう告げる。
「今だけは、俺の後ろで守られてくれ」
もう、どこへも行かないよね。私を置いて、行かないよね。そんな言葉が出そうになる。でも、私はそんな奴じゃなかった、こういう時にそんな女の子らしい台詞は出なかった。女らしくない代わりに女々しくもないというのなら、確かに私はその方がいい。
私の返事を聞くまでは立ち上がる気がないようだ。私から見える魔導軍達とあのバカ達の戦闘も激しくなっている。じゃあ、まあ、私らしく。返事をするしかないんだろう。
光が、差し込む。
「いいから早く戦いなさい」
「それでこそお前」
「それと、私が許したなんて思わないでね」
「ああ、そんな感じだ」
「私はアンタに言いたいことが沢山ある」
「いい睨み方だ、ゾクゾクする」
「だから絶対、私を助けなさい」
「当たり前だ、その役目だけは俺のものだ」
「レイン」
「なんだエル」
風が、吹いた。
「ありがとう」
「……素直じゃねえなあ」
うるさいと、私は言う。アイツは笑って、私を後ろに立ち上がった。
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