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「さてエル……一つ聞くぞ」
「……なに?」
エルと、そう呼ばれるだけでくすぐったい事をなんとか隠す。フードの付いた黒のローブをはためかせ、真紅の刀を抜きながら、レインは私に聞いてきた。
「世界を裏切る覚悟があるか」
「カッコつけてんじゃないわよ、ちゃんと言いなさい」
「……いや、あの、ああいう貴族達とか王政とかと敵対する気とかある?」
お前男のロマンとか考慮しろとでも言いたげなレインを無視。そう、私はこんな感じだった。このバカ達といた時の私はこんな感じで、何も無理をせずに話せていた。
「俺達はこうして盛大に犯罪めいた行動に出てるわけなんだけど、お前はそれに賛成出来るか?」
「……言ったはずよ、今の私は自分の正義が分からない。二つ返事でそんな答えは出せないけれど、そうね」
単純な人間だと、思われているだろうか。こんなにも簡単に立ち直る私を。いや、そう思ってくれた方がいいのかもしれない。私がまた、助けられるだけの存在なんじゃないかと思っていることなんて、些細なことを気付かれないのなら。
「私は、あんな貴族達が大嫌い。王政の掲げる正義にも賛成出来ない。そんなところかしら」
「それだけ言えれば今は上等。じゃあ質問を変える、俺達に付いて来れるか」
「今更ね。どう答えてもアンタは私を連れて行くんでしょう?」
「まあそうなんだけど……俺達は多分、今の時点じゃ悪者だぜ? そんな奴に攫われてもいいのか?」
「だってアンタ、大魔王なんでしょ? そんなの悪に決まってんじゃない。世界中の人に嫌われても、交わしてしまった身の丈に合わない約束を守ろうとする、そんな奴なんでしょ」
「……覚えてたのかよ」
忘れるわけが、ないでしょうが。
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