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一本敷かれた赤絨毯の上を、レインは歩き始める。少し伸びた黒髪を揺らし、傷だらけの身体をそのままに。急ぐでもなくゆっくりと。踏みしめるように歩く。
貴族を避難させる魔導軍と、アイツらを――ううん、私達を止めようとする魔導軍。そこかしこで起きる戦闘は激しい音を立てている。倒れた燭台から巻き上がった炎が揺らめき、色とりどりのガラスの散らばる地面を赤く染める。
「待ちなよ」
「ようニキテ。魔導軍、サマになってんじゃねえか」
「それはありがたい言葉だね。そう、僕は魔導軍だ。だから君達のこんな行動を、ただ見逃すわけにはいかないってのも分かるよね」
「そんなこと言って、なんか楽しそうだぜお前」
「そりゃ楽しいさ……なんてったって、あんなバカな結果を招いて皆を壊した君に全力で文句が言えるんだから」
「勿論存分に言ってくれて構わねーけどよ。こんな状況じゃあ流石に俺も勘弁してもらいたい」
「僕がそんな事情を考慮する理由はないだろう」
「だったらこっちも全力だ」
立ち止まることなく、間合いに入るレイン。一切迷い無く構えた剣をレインに向けるニキテは、けれどすぐに防御の姿勢を横手に向けた。
『あら残念、防がれましたわね』
「レ、レイン君がついに女口調に!?」
「おーいアテナクルシア、そのバカ気絶させといてくれ」
『わたくしに命令出来るのは御主人様だけですの。そんな軽々しく話しかけないでくれませんこと?』
「で、そのカイルは?」
『あなたがそうしたように、御主人様にも連れ去るべき女がいることぐらい、知っているハズでしてよ』
どういう理屈かは分からない。レインが、二人になった。制服姿のレインはニキテと拮抗しながら、赤絨毯から押し出している。そうして私と話した方のレインはやっぱり止まらず、ただ歩いて行く。
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