―奇跡―

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 その先で赤絨毯を背に魔法を唱え続ける、青髪の兄妹。赤絨毯を守護するような二人を前に、あの魔導軍がその守りを突破できていない。 「レイ兄ぃ、言っておきますけど私達はこんなところで本気を出したりはしませんよー? とっておきの魔法達はあとでレイ兄ぃにぶつけちゃうんですから」 「いやぁ大変ですねぇレイン君。残念ながら私はいつでも妹の味方ですので、助ける事もできそうにありません」  後ろからでもレインが冷や汗をかいているのが分かる。フェイは見た事も無い厚い本を構えて、スイは指揮棒と使い魔である妖精を使役し、その境界線を守り続ける。 「さてエルちゃん、足治そっか」 「ミズキ……」  私の隣へ飛び降りてきたミズキは、すぐに詠唱破棄で治癒魔法を唱えた。いつか治癒魔法というものに魔力切れへ追い込まれた姿なんて霞んでしまう。たった一瞬で私の足から、痛みが消えた。 「痛みは消したけど、今は安静にね。もしかしたらこの戦闘に参加するつもりだったかもだけど、それは私が許しません」 「なんか……変わったわねミズキ」 「そうかなぁ? 私はいっつもこんな感じだったんだけど、それを表に出せてなかったからかな。だからこれからは、エルちゃんにも私は我侭でいくことにしました」 「具体的には?」 「みんな戦ってるけど、私はああゆう貴族の人達は好きじゃないもん。面倒くさいからエルちゃんを安静にさせるという名目で抱き締めておく!」  気のせいかしら。バカが一人増えた気がする。 「やっぱりエルちゃんはナイスボディだよね!」  気のせいじゃなかった、バカが一人増えていた。誰のせいなんだろう、私とセレナがいないあの集団が原因か。だとしたらアイツら全員ぶっ飛ばさないと。
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