39368人が本棚に入れています
本棚を移動
/679ページ
「そういえば、アヤメさんは……」
「外の援護に向かったんじゃないかな。流石にリリーラさんだけじゃあセンリさんとバトラさんは抑えられないからね」
「そう……」
父さん達が姿を見せない理由は、それか。けどやっぱり分からないことだらけだ。行方不明になっていたリリーラさんは、ミズキ達と一緒に行動していたってことなのかしら。
「……でも、ホントに、良かった」
そんな。
消え入りそうな声が後ろから聞こえた。私の腰に両腕を通し、私の背中に顔をうずめるミズキは、泣いていた。それは私が知っていた、優しい彼女のままだった。
「また、みんなで会えて、よかった」
「……うん」
回されたミズキの小さな手を握る。少し震える小さな手に重ねた自分の手も、頼りないものだったけれど。だけど重ねてしまえばその震えも気にならない。
「……うんっ! さあエルちゃん、こんなことをしている場合じゃなかったよ」
「そうね」
「ス、スイちゃんがもの凄い顔で睨んでるし」
「そうね」
食べられてしまいそうなそれだった。
「とにかく私達はここから逃げ出さないと。そうする為にはあの人を――なんとかしないとね」
私の後ろから顔を出すミズキの視線の先。そこに居たのは、漆黒の衣装に身を包んだあの女。ヒナフィと名乗るあの女。今この瞬間での正義の味方が、現れた。
最初のコメントを投稿しよう!