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いつかアタシに言ったように。笑っていろという親の言葉を信じ続けて、顔一杯の笑顔を浮かべるカイルが、消えてしまっていないんだって。
アタシは。
そう、願っていたんだ。
「はあああああああッ!」
上段の蹴りで迎え撃つ、咆哮を上げ逆足を放つ、地を叩いて亀裂を生む。身を捻りながら左右に手を突き出し兵士を弾き飛ばす。
吹き荒れる疾風のように、駆け抜ける燕のように。その身体を暴れさせ、向かってくる兵士を薙ぎ払う姿は、舞っているかのよう。駆け引きも力配分も何も無い全力を、あいつはこの場に見せ付ける。
今ここに居る兵士達は、全てを知っている人達だ。アタシの知らない母さんだって知っている、アタシが犯した過去も知っている、アタシの父さんの生き様を知っている。
「聞かせてくれ、カイル君……!」
父さんは。
武器も取らずに身一つのまま。
大きな声で、問いかけた。
「君はどうしてセレナを求める!」
兵士達に手加減無く衝突し、薙ぎ払う全員に拳を当て、カイルは叫ぶ。
「アンタらが立ちはだかる理由を俺は知らねえ! ただしそれが国の為でも王の為でも姫の為でも! 全部纏ってかかってきやがれ! 」
駆け抜けるカイルは、父さん達を背に吼える。
「そんな全部をこの身に刻んで、俺はこいつを貰ってく!」
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