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「……私は君を、どう呼べばいいのかな。レイン君と呼ぶべきか、紅目の男と呼ぶべきか」
「レイン君、で、お願いしますセンリさん」
レインは。
その質問がされたくなかったかのような反応だった。父さんはその答えを受けて静かに頷く。けれど私の中には疑問が残った。滅茶苦茶に思考が乱れていたと言い訳をしても、少し遅い。そうだ。
どうしてレインは、紅十字と同じ仮面をしていたのか。こんな事にすら疑問を持てなかった自分は本当に鈍い。
ただの装飾だったのか、いや、あまりにも無意味過ぎる。だとするなら、いや、それはあまりにも荒唐無稽だ。魔法なんて程度じゃ済まない事態になる。
私達が知っていたロイヤルナイトの第一位、再臨の紅十字がはじめからレインだったのだとしたら……。私達と時間を共にしたレインは、一体誰だっていうのよ。
「俺は〝そこ〟については何も教えませんよ、センリさん。紅十字という存在についても、俺との関係性についても。だからあなたには、俺をレインと見た上で接して欲しい」
「……いいだろう、もとより私にとっては些事でしかない。では、レイン君。私の質問に答えてもらおう」
魔導軍の陣を割り、レインと体面する父さん。私達を囲む軍の人達も、その外に居るアヤメさんやリリーラさんも何も言わない。
炎が消え去り、壁という壁に穴が空き扉も開け放たれたこの空間に冬の風が入ってくる。緊張する状況の中で、父さんは口を開いた。
「君達の目的はなんだ」
「……エミルを、奪うことです」
「それは果たしているだろう。私が聞いているのはこれから先、君達がどうするのかということだよ」
父さんの真剣な眼差しを、睨むでもなく敵視するでもないそれを見たのが久しぶりだと感じたのは、私が父さんから逃げていたのか、それとも、父さんが今まで苦しんでいたからなのか。
私の心中は所在無く揺れる。今何を考えれば良いのか分からない。どうしてレインがこの場にいるのか、どうして紅十字と同じ姿だったのか、父の質問に、アンタはなんて答えるのか。
私はただ、この世界を見るしか出来ない。
見たもの聞いたものしか信じられない私は、見て聞くことしか出来なかった。
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