セレナ=ラタパーニャ

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     * * *  レインやミズキと同じように、オーブと呼ばれる英雄に関係する何かを手にしたアタシ。だけどアタシだけが受け継いだもう一つのモノ。  それが獣魂。今ではアタシの、罪の証となってしまったけど。  そこに名を連ねる魔法使いは一騎当千。そう位置づけられるロイヤルナイトの父さんを 出し抜く程の力を呼び起こす何かが、アタシにはあるらしい。  けどそれは、ただの暴走でしかない。意識を失い、想いを破棄し。かけられるべきリミッターの全てを排除して得られる、暴力的なまでの力。  その力がアタシは――大嫌いだ。  絶望するような事態や、激しい激昂、死を感じる場面。そんな時に発動してしまう、リミッターの解除。それが生む結果は、いつだってアタシをより孤独にする。  今回、だって。  黙示録なんて名前の連中が学校へと侵入し、アタシたちを襲ってきたその日。カイルと一緒にクィンハートと名乗った道化師に挑んだこの日。アタシは心を折られ、無様にも、過去にそうなったように、獣魂に自分を支配されかけた。  その場合にはアタシの気を失わせるという、父さんが考えた今現在では唯一効果的な方法を、責める権利はアタシにはない。だってそれは間違えようもなく、アタシを守るための処置であってくれるんだから。  だからあの時アタシの意識を奪ったカイルを、責めるつもりは毛頭ない。ただアタシが不測の事態に冷静を見失い、暴走したことの後始末を、アイツはやってくれただけなんだしね。  そう――だからたとえ。  たとえ目が覚めたときに自分が安全なフォリア国内へと転移させられていて、リィーンへと全力で風を使い飛んで行った時に、敵の消えた街の中で、破壊の跡しか見えない景色の中で。  レインが死んだという事実を告げられようとも。  アタシは、何も言うことが出来ないんだ。  ただ重症で倒れていたというアイツの隣に座りながら、気遣いから貰った温かい飲み物の湯気を見つめながら。  ただ泣きじゃくるという愚行しか、アタシに出来ることはなかった。
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