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幼馴染みが見る影もなく変わってしまって。
巻き込まれるままにエルだけは守ろうとして。
自分を犠牲に守れるならと、迷うことなくそうして。
それで終わりの、筈だった。俺はもう何も考える事もなく、後悔する時間も無く――エルを守れたという結果だけが残ってくれる、筈だった。自分の、汚い、本音なんか。気付かなくて良い筈だった。
死にたく、ないなんて。
俺は悪くないだろって。
間違ってたんじゃないかって。
ただ弱かっただけじゃないのかって。
どうして俺が、エルと一緒に、いられなくなるのかって。
『う――あ、ッ……!』
死ぬつもりなんてなかった。エルを逃がした後も、どうにかして生き残ってやると思っていた。あの時の俺にはあれ以外、エルを助ける手段はなかったと心から納得をしている。選択は全て、自分の意志で行った。
だけど。
その選択が失敗だった時の事を――軽視していた。
失敗した後の自分の事も。失敗した後のエルの事も。
エルは守れたけれど、自分が倒れてしまった場合の事を。
考えていない。
残される気持ちにも、与えられる後悔にも。全く思考を回していない。選択に対する結果に、責任を持つ覚悟をしていなかった。それでもなんとかなると、心の中で思っていたに違いない。
でなければ、こうして。
自分の選択に対して、心が締め付けられるようなことはなかった。
エルを守る。
その為の行動に、後悔を持ちそうになることはなかった。そうして後悔を感じ始めている自分を責め立てることも無かった。本当に守れたのかと不安になることも、自分は一体、何の為に何が出来たのかと、狂いそうになることも。
「え……えいっ!」
シャオに似た子供は、何かを念じるように目を閉じて叫んだ。
帰還命令。俺は、この子を守るなんてことを、身の程知らずにも考えていたけれど。その子に心配され、こうして守られるように、隠される。
自分の心さえ守れなくなった俺は、暗くなる視界が濡れていることに、ようやく気付いた。
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