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「それに健気ではありませんか?今の朔をも骨抜きにしても以前の朔に義理立てして侍り続けることを許さなかった……それも私たちが静観している中で」 後ろめたさを覚えた氷室はそれを誤魔化すようにぶっきらぼうに答える。 「年頃の娘の思考回路は難解で爺には到底わからぬわ」 「まぁ……いつからそんなにおつむが硬くなっておしまいになったの?」 「綾乃」 「ともかく……氷室、貴方様が芙蓉を悪く言うのはこの私が許しません。それだけは覚えていらして」 氷室に啖呵を切った綾乃は平伏したままの幸継に芙蓉を探すように頼み、それを見送ると立ち上がった。 「何処へ行く?」 「久方ぶりに孫の顔でも見に行こうかと思いまして」 「何もそなたが出向かずとも呼び寄せれば良かろう」 「お高く止まっているばかりでは得られぬものも多いと私はあの子から教わりましたから」 失礼しますと綾乃は裾を捌いてその場を後にした。 「気付かれたか?」 舞い降りた影に尋ねるもわかりかねます、と静かに返された氷室は面白くなさそうに顔をしかめた。 「そなたはしばし出歩くことを控えよ」 「御意」 結城は恭しく頭を垂れた。
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