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「……休めぬか?」
傍らで身動ぎを繰り返し、終には身を起こしてしまった春香に飛高は優しく声を掛ける。
「……芙蓉はちゃんと食べてはるかしら」
沈む声に、揺らぐ瞳を認めた飛高は身を起こしそっと春香を抱き寄せる。
「大丈夫だ……きっと」
「……もっと気を配って置くべきでした」
「それはもう過ぎたことだ」
はらはらと零れ落ちていく涙を指先で拭ってやるも春香は俯いて行くばかり。
「それでも……あの子をひとりにしてしまったのは後悔してもしきれない」
「…………」
「あの怪我も……一生ものやのに」
「そう、だな」
誠に聞いても痛みの感じ方は人それぞれですから、と言うばかりでうやむやにしてしまおうとしていたが、フェンに尋ねてみたところあっさりと相当痛むはずだと告げられた。
痛み止めを飲んでも動かそうとすれば断続的に続く神経を苛む痛みは取りきれていないはずだと。
そんな素振りはおくびにも出さぬ芙蓉に飛高は感心するばかりだった。
「大切にするからと約定して……神威に半ば拐うようにして置いたのに」
「ああ」
「……朔から離れることを選ばせてしまった」
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