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「他に思い当たるところはないかな?」
芙蓉失踪から早一週間。
何ひとつ手掛かりを得られぬ状況から焦燥に駆られている朔を見ていられず、日和は何度となく伶に尋ねる。
「……ないわ」
伶はその度に悲しげに首を横に振るばかりで、その腕の中にいる暁は不機嫌らしくぐずってぐずってなかなか眠ってくれはしない。
「そうですよね」
「……芙蓉は私のことをよく知ってくれているのにこうなってみると、私は芙蓉のことを何にも知らなかったんだってことがよくわかったわ」
涙ぐむ伶の頭を抱き寄せながら、日和は安心させようと言葉を紡ぐ。
「全力で探しているから……だから、きっと近い内に見つかる」
「日和……」
だけど伶は掠れる声で日和が思いもしなかったことを口にする。
「探さないであげて」
「え……?」
「……朔君に芙蓉が願ったのは探さないでってことだと聞いたわ……それがきっと芙蓉の望みなの。嘘偽らざる今の芙蓉の願いなのよ」
「伶、だけど」
「一時とはいえ、神威の中枢に触れた人間が外に出ることを許されないのは知っているわ。知っているけど……」
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