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「藤原レオってこのクラスか?」
入学式が終わって、ほんの少しの休憩時間に仲良くなろうと頑張っている新入生達のざわめきの中に少し低い男の声。
黒縁眼鏡をかけて、少し茶色の髪をしている。
右手には太宰治の『人間失格』の本。
聞いている癖に目線は、その本にある。
「もう一度聞くが、藤原レオってこのクラスか?いないならいないって本人が言えよ。はやく別な本も読みたいんだ。」
「いないですよー。」
僕の名は確かに藤原レオだ。
面倒な匂いがする。
だが、退屈はしなさそうな危険な匂いも感じていた。
だから、答えてみたのだが。
返ってきた返事は、
「そうかー分かった。」
といってその男は教室を出て行った。
「は…?」
教室内全ての人間は僕も含めて唖然とする。
僕は、こんな言葉使う事もあるんだなとか思いながら彼を見送っていた。
学ランに三年を示す鷹のバッチがあったのでおそらくは先輩だと思う。
突然だがこの高校は学年によって、バッチが違う。
三年は鷹、二年は鷲、一年は鳩である。
先輩に呼びだしをくらうような事はしていない。
いや、したけれどバレてはいない。
校長のヅラは確かに僕が燃やしたけれども、この世界には有り得ない力だから証拠はないはずだ。
そう思っていたこともあった。
1人の少女に会うまでは。
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