<11>

19/63
前へ
/494ページ
次へ
「俺、ずっと考えててさ。」 と彼が弟のとこを見て話し出した。 「気に入られないようなこと、しでかしてたかなぁってね。」 少し口調が軽くなったのは、聞いてる弟に圧をかけたくないからじゃないだろうかと勝手に思ってしまうのは彼の肩を持ちたいから。 でもそんなことお構いもなく?彼は弟に向かって話を続ける。 「で、思い当たることがあった。 あんときだろ? 麻子・・・君のねぇさんが熱出して、ここで君と偶然会ったとき。 俺、あんとき、熱の麻子置いて帰ったもんな。」 んーーっと、と思う。 だって、やっぱり当の本人の私を蚊帳の外にして彼と弟だけで会話をしてるようだったから。 「だって。あのときは!!」 私の気持ちを勝手に置いて行かないで欲しいという想いから、つい口出してしまえば 「そう、あのときは自信がなかったから。ごめんな。」 当時の気持ちが蘇るかのように少し苦しそうに吐いた彼の言葉は私に向けられていたように感じた。
/494ページ

最初のコメントを投稿しよう!

930人が本棚に入れています
本棚に追加