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「もう何年だっけ?」
あれからずっといつもそこにいてくれる武は、缶ビール片手に聞いてきた。
「もう10年かな。」
10年て言葉を聞いたら、大波が立つみたいに心が揺れた。ぐらついた。
「どうしたの?」
「もう10年なんだあって思ったらね・・・。」そしてため息をついた。
「そうだな。10年なんだよな。考えるとすごく長い時間だけど、美雨には早いよな。」
そう言ってビールを飲み干して缶を握り潰した。
17の時に付き合っていた2つ上の彼が事故で亡くなって10年。もうすぐ10年だった。
あの時から私は前に進まないどころか立ち止まったままの気がしていた。
どんなにつらくてもいつも武がいてくれて、私を支えていてくれた。
そんな私のせいで、武は彼女もできないでいた。
何年だったか前に武に彼女ができたけど、私が原因で別れてしまったことがあった。
あの時は責任を感じて武に「もう私の事はいいから、自分のこと考えて」そう言ったけど、結局、私が彼のことから前に進むまではって言って、もう10年。
私は何も変わっちゃいない。
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