テストの日

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 隣の学生は、男だった。――しかも。 (やたっ、好み)  女の子のショートくらいの長さ髪の色は薄茶色に染められ、その髪は、講堂の窓から零れ落ちる日に透けて金色に見えなくもなかった。  机の上から見える均整のとれて痩せた上半身はこちらに乗り出している。  焦茶色の瞳は、助けを求めるかのように、こちらをみつめ、数秒ごとに瞬きを繰り返していた。  なんて颯爽とした男の人だろう!  こんなときで、こんな状況でなかったら――。 (釣ってやるところだったのにぃ)  ふたりでうふふあははといちゃつきながら構内を歩くところを想像し、身もだえした。 『消しゴム、貸してください。忘れてきたんです』  断るという選択肢? そんなものはない。  イエス一択に決まっている。
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