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生憎消しゴムは1個しかない。
隣の兄ちゃんに貸したままでいると、五十個ある回答欄のずれている欄を全て修正することは困難だ。
女はMONO消しゴムを二つに割ることに決めた。
茶色の平べったい机の上で定規を白い弾力のある表面に注意深くあてた。
そして力を入れようとした。
女はこの日のことを何度も悔やむことになった。
支える手が必要だったのだ。
どうして定規を当てたときにあのどこへでも行きたがる、やんちゃで魅惑的な白い固体をしっかり自分の手元に抑えておかなかったのか!
消しゴムは押された反動でころりと転がり、机の下へ落ちた。
傾斜のついた教室をころころころり、すっとんとんと落ちていった。
まるで昔話のおむすびのように。
女も、隣の兄ちゃんも昔話の弁当を食べ損ねたおじいさんのような顔をして転がる白い固体を見送った。
消しゴムは手の届かない先に落ちてしまった。そして。
きーんこーーん、きーーんこーんかーん、きーん。
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