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「ふぁ~、、んー!」
大きな欠伸と共にグッと背伸びをする。
春の暖かな空気はなんとも気持ちが良い物だが、眠気を誘うのがたまに傷だ。
腕時計を見ると、時刻は午後二時半。ある意味一番眠くなる時間だろう。
入れておいたコーヒーを飲み干して首をコキッと鳴らし、再び机に立ち向かう。
「ん~……、しかし次の仕事どうするかなぁ」
机の上にある書類と睨めっこを始める事数十分。
仕事の内容は新製品のキャンペーンガールや店頭でのミニライブ、他にはグラビアの撮影などetc...
どの仕事もそれなりに面白そうではあるのだが、如何せんうちのアイドルは相当な恥ずかしがり屋のため、仕事を選ぶのも中々大変だったりする。
本人は「プ、プロデューサーが選ぶ仕事だったら何でもします!」と強気な発言をするのだが、前に俺が持ってきた大御所ラジオ番組でゲスト出演したんだけども、緊張の余り、噛みまくって地元の方言で喋り出す始末だった。
結果としては先方側からは面白いと判断していただき、リスナーからの反応も上々だったと好評をいただいたのだが、うちのアイドルにはそれが大層な失敗だったようで、事務所に帰ってきて先輩愛用のスコップを持ち出し危うく地中に埋まる所だったのだ。
まぁその出演から火がついて色々な仕事が来るようになった訳だけども、本人の事を考慮して仕事を選ばないといけないというのが今の状態だ。
「お、これなんかどうだろう」
ふと、一枚の書類に目が止まった。
「なぁ、美穂。次はこれなんかどうだ?」
ソファの方に声を投げる。
しかし、いつもの元気な返答は無い。
──まさかとは思うが……。
嫌な予感と共に椅子を回転させ、ソファの方に振り返る。
「やっぱり……」
そこには予想通りな光景があった。
「ん、んん~……」
先程まで小説を読み耽っていたはずの少女がソファの上で横になって静かに寝息を立てていた。
「まぁたソファで昼寝してるよ……、今も一応仕事中なんだからな」
ガシガシと頭を掻いて椅子から立ち上がる。
押入れからタオルケットを取り出し、そっと起こさないように掛けてやる。
起こしてやろうかとも考えたが、今朝も早くから動いている事だし、これぐらいは多めに見て三時までは寝かしておいてやろう。
「ん、フフ……」
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