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思い切り体重を乗せ、渾身の力を込めた一撃は、難なく師匠の右手で、流されるように反らされて空を切る。
体勢を崩した俺の視界の左側には師匠のニヤけた顔があり、
瞬間に悪寒を覚えたが、俺は何も出来ずに腹に膝蹴りを叩き込まれて、俯せに倒れた…
イース「威力だけを重視し、簡単に隙の大きい攻撃に頼るな。
攻撃の後に細心の注意を払え。
相手の実力を出来る限り正確に見切れ。
必勝の為には、まず守りを考えろ。」
言いたい放題言われた感があるが、言ってる事は正しい…
その後、完全に意識を失うまで何度もボコボコにされたのは、言うまでもないだろう…
俺「痛ぇ……」
イース「起きたのか…
こっちに来て座れ。」
意識が覚めると同時に師匠に言われ、美味そうな臭いにも誘われて、俺は這いずりながら師匠の横に転がる。
イース「動くなよ」
そう言って掌を俺に向けてくる
あ…師匠の掌に魔力を感じる…ような気がする。
イース「母なる海より生まれし純水よ
清らかなる力を持って彼の者を癒せ
アクアヒール!」
師匠がかなり恥ずかしいセリフを吐いたと思ったら、水が師匠の掌から放たれ俺を包む。
すると今まで痛くて動かなかった体が、普通に動いた。
俺「魔法ってすげぇな…
。」
イース「お前に教えるのはまだまだ先の話だな。教えるのは簡単な攻撃魔法からで、回復魔法は後々になるがな。」
なるほど…攻撃魔法?
俺「師匠、攻撃魔法って何ですか?」
師匠は肉を焼きながら俺の方に視線を向けて、
イース「お前は私のフレアーレイを食らって消し飛んだだろうが…
それよりもさっきのアクアヒールだが、面倒な詠唱まで聞かせてやったんだから、詠唱ぐらいは覚えろよ。」
そう言ってまた肉を焼きだした。
そう言えば、何も食ってない…
今なら食えるなら何でも食える気がする。
俺「師匠、俺も食っても良いですか?」
腹が減って死にそうだ。
イース「あぁ…その為に飯も食わずに鍛練したからな。
覚えておけよ、狩りには狩った者の責任がある。
下らん理由で獲物を粗末にするな!」
そう言って肉を木の枝に刺して渡して来た。
いつの間に狩りに行ったのか、昨日?の牛とは違う生き物の骨やらが、少し向こうに転がっていた。
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