伝説の男

11/22
前へ
/100ページ
次へ
朝日は誰にも平等に降り注ぐ。 昨夜の不安を跳ね退ける様な晴天。山の奥深くへと進む足取りも、幾分か軽やかに感じた。 ──と言っても、実際に歩くのは馬の方だが。それでも重い鎧を身に纏うと、馬上で感じる僅かな揺れも負担には為る。 そんな疲れも消し飛ぶ様な穏やかな空は、軟らかな風を彼等の元へと運び続けた。 馬の蹄(ひづめ)が緩やかな時を告げると、時折聴こえる鳥の囀りが心地好く感じる。 「いやはや、昨日は緊張であまり寝付けませんでしたが、こうも朝日が気持ち良いと、あまり眠気も感じませんな」 暖かな時間は誰とも無く会話が弾み、これから会う男の不安など感じる事も無かった。 「──して、伝説の男、伝説の男と、聞き慣れた故に気に留めませんでしたが・・・、その男の名は何と?」 騎士の一人がゴルドに対して首を向けると、ゴルドは眉を歪めて考え込んだ。 「・・・うむ、実は私も名は知らんのだ。過去奴と争った時は、既に通り名で呼んでいたからな、ただ──」 「ただ?」 「奴の名は呪われてると聞く・・・。もし口にでもすれば、即座に命を落とすとも言われておる・・・」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加