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そんな団長の言葉。無下には出来ない。それぞれが返事はせずに頷きだけを返していた。
「ゴルド団長殿。これから会いに行く者は、それ程に腕の立つ武人なのですか?」
何とか話の流れを変えようと、一人の騎士が口を開いた。
「・・・むぅ」
ゴルド=ゴールディア。
騎士団長の称号を持つ男は、部下の問いに唸り声漏らした。
「ゴルド殿も、かつてはオルティアの稲妻と言われた武神。
山奥に追われた田舎の者になど、それ程の礼を尽くす必要は無いのでは?
話を聞く限りは、ゴルド殿が脅えている様に聞こえますぞ」
若く血気盛りな騎士の一人、彼が鼻を鳴らして口を出すと、騎士団長のゴルドは腕を組んで考えた。
「確かに・・・。だが・・・相手はあの『伝説の男』・・・」
この口を出した若い騎士も、一等騎士の誇りから、未だ見たことも無い男に決して劣っては無いとの自負が有った。
オルティアでも一等騎士に選ばれるのは、精鋭の中でも更に武を研磨させた一流の集まり。
自身の剣技は、誰にも退けは取らないと、自信に溢れた者ばかり。如何に伝説の男と言え、国にも仕えぬ過去の英雄、それに過剰な敬意を払う事に疑問が有ったのは確か。
自分達の団長は騎士団の顔。如何に団長の命令でも、男に対して過剰にも見える卑屈な態度は、彼等の様な、若い騎士には非常に面白く無かった。
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