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今回の男に対しての謁見は、王からの直々の勅命。大量の酒樽を貢いで機嫌を伺うのは異例の事だった。
男は伝説として語り継がれていた。過去オルティアを危機から救った英雄だと。騎士道を志すなら誰もが一度は耳にする神話の様な話。
子供の頃、お伽話にも聞かされた者も少なく無い。偉大な英雄。しかしそれも過去の話。
事実ならば男の歳はゴルドと同等程度と言う事になる。実年齢は5~60程か、もしくは既に他界も考えられる。
剣さえ満足に振るえるかも怪しい年寄りに、たかだか酒樽を送り届けるだけの事。荷馬車に4人の護衛を付ける事も、若い騎士には納得が行かなかった。
「祖国の英雄であれば礼を尽くすのは騎士として当たり前、
・・・しかし、
如何に英雄と言え、ゴルド団長も間違い無く我がオルティアの英雄ですぞ。
伝説の男と言え、卑屈になる必要は有りますまい」
オルティアの稲妻と言われ、ゴルドも僅かに高揚した。
口元を歪めると、次第にそれが高笑いへと変化した。
「確かに!確かに!私もあの男には退け取らぬ武勇が有る!そうじゃ・・・何も卑屈になる必要は無いな!!」
髭の間から白い歯が覗くと、がははっと唾が飛んだ。
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