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日が陰り、月夜が代わりに空を支配した頃。一団はようやく目的の山へと入り込んだ。
荷馬車を離れぬ様に、側に木切れで松明を燈し、朝日が昇るのをジッと堪える。
山の夜は人が考える以上に危険な場所。山の獣は夜行性が殆どで、常に火を絶やさずに備えなければならない。
しかも信仰の深いこの国では、闇夜にはウィッチ(亡霊)が徘徊すると信じられ、夜を極端に嫌っていた。
如何に一流の騎士と言え、闇に潜む亡者の類には対抗出来ない。どの国でも未知な存在を畏怖し、夜の行動を自粛する事は珍しくは無かった。
彼らも交代で見張りを立て、薪の光を頼りにしながら明日の出立に備えていた。
黙々と夜食の干し肉を食らいながら、皆が伝説の男に想いを馳せていく。
夜の闇がそうさせるのか、明日の出会いに期待寄せる為か。騎士は剣に生きる者。強さに引かれるのも当然。
火を囲み語る話しは、自然と男の想像になぞられていた。
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