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「でも、こう人目があるんじゃ手も繋げない。…二人だけになれる場所に行こう…。」
先輩はオレの腕を強引に掴んだ。
「え…?」
そして、人込みをかきわけるように駆け出した。
「あ、あの…人前ですよ…。」
先輩はオレの話も聞かず、ただ一直線に走っていた。
人込みをかきわけ、たどり着いたのは林の中だった。
「やっと二人っきりになれたな。」
「二人っきりになれたなじゃないです、先輩。あんな人前で…」
―ドンッ。
言葉の途中でオレは先輩に押し倒された。
暗闇の中、先輩の顔がしだいに近付いてくるのを感じた。
「まだ俺を先輩なんて呼ぶのか?そろそろ、名前で呼んでくれてもいいだろ?」
さらに顔が近付いてくる。
唇と唇が触れ合うと思った瞬間、
「リュウさん…!」
オレは先輩を突き飛ばしていた。
「…すみません。」
「いや、名前で呼んでくれたから許してやるよ。それに俺の方も焦り過ぎていた。まぁ、次の目標は呼び捨てにできるようになることだな。」
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