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同じ太陽が昇り、同じ雲が浮かんでいる。
彼女“螢”はそれを疑う余地無く信じている。
むしろ、信じているのはそれだけなのかもしれない。
螢は自分の存在すら疑っていた。
自分の存在が信じられないが、確実にここに存在している
――そんな奇妙な感覚が螢の意識を支配している。
しかし、それも螢にとっては『普通』の事。
毎日同じように起床し、身支度を整えて玄関を出る。
アスファルトの焼ける匂いがする。
脳裏まで焼けるのではないかと思う程のその匂いは鼻から体に入り込み、体を少しずつ支配し始める。
アスファルトの向こう側には逃げ水が浮かぶ。
表情一つ変えることなく、歩みを進める。
いつも通る道、いつも通りの風景。
毎日同じ繰り返しが続く。
熱に浮かされるようなこの感覚もいつもの事
――意識を体内に押さえ込みながら歩みを進める。
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