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「いえ、私はただ・・・」
これには荒井も面喰ったらしく、嫌味を聞かされることはなかった。
だから俺は、逆に荒井に言ってやった。
「そうやっておまえは何かを勘ぐってんのか?いいか、今日俺は向井夫人との食事会に行く。彼女はお腹も大きいんだ。そんなに長時間付き合わせられないだろ」
荒井はぐうの音も出ないといった様子で、
「はい、おっしゃる通りでございます。誠に申し訳ございません」
そう言って頭を下げた。
「じゃあ行ってくる!」
そんな荒井の前を通り過ぎ、俺は車に乗り込んだ。
車のルームミラーを覗き込むと、荒井がまだ頭を下げている。
はははっ、荒井のヤツ、少しは懲りたのか?
ふぅー、俺と千秋がどうにかなるとでも思ったのかよ?
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