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男とは明らかに違う「女」という生き物を目の当たりにした俺だったが、最初はどうしていいか分からず、ただ恥ずかしくて避けていたような気がする。
けれど、俺の胸の奥に芽生えたムズムズする感触だけはどうにも止められず、ひどく戸惑っていたのを今でも覚えている。
しかしそれはほんの初めのうちだけ──
彬や漣といった男たちとの出会いもあり、その後の俺の人生は華々しく開花していった。
が、変わっていったのはそれだけではない。
俺の恋愛感情が大きく歪み、屈曲していったのもこの時期だ。
俺はふとそんな昔のことを思い出しながら、静かに母の前に腰を下ろした。
「何でしょう?」
「これなんだけど、ちょっと見てちょうだい」
テーブルの上には、すでに見慣れた封筒が置かれていた。
言わずと知れた見合い写真だ。
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