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だから俺が淋しい思いをしていると感じたのか、母は俺をとても可愛がってくれた。
それなのに俺は、どこか遠慮がちな母に決して心を開くことはなかった。
血の繋がりのない親子──
どうしても越えられない壁が俺たちの間に立ちはだかっているのを、俺は幼いころから感じていた。
だから余計に、突如やって来た荒井を兄のように慕っていたのかもしれない。
「では母さん、明日の会議の資料に目を通しておきたいので部屋に戻ります。おやすみなさい」
俺はそれだけ言うと立ち上がった。
「そう。あんまり無理をするんじゃありませんよ」
母は淋しそうに俺を見上げると、母親らしく言った。
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