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──見合い当日──
見合いの日がやって来た。
気は進まなかったが約束は約束だ。
俺は仕方なく荒井の運転する車に乗り込んだ。
「今日は大丈夫なのか?」
会社以外であまり見ることのない父が、俺に向かってぼそりと言った。
「まあ、結果はお会いしてからでないと分かりません」
そう答える俺に、父は眉を少しひそめると、何も言わず目を閉じた。
父も俺の結婚に期待を寄せているのは知っていた。
独り立ちした俺に会社の全権を委ね、孫の顔を見てひと安心したいのかもしれない。
そのためには一刻も早く見合いを成功させ、俺に家庭を持たせようと考えているのだろう。
けど実際問題、そんなに上手く事が運ぶわけがない。
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