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車内ではロクに会話も弾まないまま、俺たちを乗せた車がホテルに到着した。
「まあまあ今日も一段と素敵ね、崇さん」
そう言って俺たちを出迎えてくれたのは、父の妹、頼木十和子(らいきとわこ)だった。
最初、世話好きな叔母が趣味程度に始めた見合いの世話人役だったが、何組か縁談をまとめるうちその評判が広まり、今では叔母の大事な仕事の一つとなっていた。
「十和子さん、どうぞよろしくお願いします」
軽く頭を下げる母に、任せてちょうだいと叔母は胸をポンと叩くと俺たちを会場へと案内してくれた。
素晴らしい日本庭園の見える和室、ここが今回の見合い会場。
もうすぐ現われるであろう俺の見合い相手は、大手自動車メーカーという家柄の超お嬢様。
大学を卒業したての22歳だとか。
叔母たちがこの見合いにノリ気なのも分かる気がする。
先に到着した俺たちが待つこと数分──
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