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草履のせいか随分と歩き辛いのだろう、やけに足が遅い。
そんな女に配慮して、俺は極端に速度を落としてやった。
すると俺の配慮に気づきもしないで、女は甘えたような声を上げた。
「あ~ん、足が痛いわ~」
おい、俺に手を貸せっていうのか?
ふんっ、俺の気持ちは無視しておいて知るかよ!
少しイラっとした俺はそれまで以上に速度を上げ、一人先に外に出た。
見るとそこには、とても手入れの行き届いた日本庭園が広がっていた。
なかでも立派な松の大木が、その見事な枝ぶりをどうだと言わんばかりに見せつけていた。
思わず俺が見惚れていると──
「きゃぁ!」
突然背後から聞こえた女の悲鳴に驚いて振り向くと、俺の数歩手前で女が倒れていた。
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