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「お疲れ様でした」
その夜書斎で本に目を通していた俺に、荒井が声をかけてきた。
この男、どうせまた破談になった俺を心の中で笑っているんだろう。
俺はちらっと荒井の眼鏡の奥を覗き込んだ。
「なにか?」
荒井の声に思わず俺はドキリとさせられた。
洞察力に長けている荒井。
俺の心はお見通しのようだ。
「先程頼木様よりお電話で、先方様よりお断りしたいとの旨、ご報告ございました」
「ははははっ、14回目の見合いも無残な結果に終わったな。どうだ荒井、俺はつくづく「縁」ってやつに見放されているらしいぞ」
苦笑する俺に、いつになく真剣な表情の荒井が言った。
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