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「お言葉を返すようですが、決してそのようなことはないかと。副社長はまだ過去に固執されているのでは──」
「もういい!」
俺は躊躇することなく声を荒げ、荒井の言葉を遮った。
俺の気持ちを察したのか荒井は一礼すると、そのまま部屋を出て行った。
一人になった俺は、椅子の背もたれに深く寄りかかり考えていた。
荒井に言われるまでもなく、俺には十分わかっていた。
確かに荒井の言う通り、原因は俺にあるのかもしれない。
しかし俺はどうしても、バックにある「KURATA」目当てに集まってくる女たちを認める気にはなれなかった。
少しでも良い家柄との結びつきを強めたい。
そう考えるのは自身の繁栄を思えば間違ったことではない。
俺の両親でさえ同じ考えを持っているのだから。
それでも俺は人を肩書だけで判断しない、他人とは違う自論を持っていた。
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