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「なんだよそれっ!」
荒井に言いくるめられるのが嫌で、俺はまたシートに拳を打ちつけた。
「あの家に生まれた宿命とでも言いましょうか。そのうちお分かりになるかと」
「そのうちっていつだよ?あーーーむしゃくしゃする!!」
自分の思い通りにいかない子供が、まるで駄々をこねているようだと俺は思った。
きっと荒井もそう思っているに違いない。
そう思うと、俺の自尊心がひどく傷ついた。
そんな俺に、荒井がハンドルをきりながら珍しく優しいセリフを吐いた。
「気分転換するのに良い店がございます。今からお連れすることもできまますが、いかがいたしましょう?」
俺は即座に荒井の話に飛びついた。
途端に自宅へ向かっていた車は方向を変え、夜の街へと走り出した。
店に着くまでの間、俺たちに会話は一切なかった。
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