苦い初恋

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「ふぅー、酒も飲んでいないのに少々口が過ぎるかと」 「うるさい!俺の愚痴を聞くためにここへ来たんだろ?今日はとことん付き合ってもらうからな」 「お言葉を返すようですが、先程私が申し上げたのはあくまでも一般論でございます。「KURATA」はみなの憧れとでもいいましょうか、特に女性の方々は、崇さん、あなたの妻の座を狙っているのです。ですから崇さんはいかなる場合や状況であろうと、常に冷静な判断を下さなくてはならないのです」 「俺はただの人間だ。そんなことできる訳──」 「いいえ、そうしなければならないのです。あなたがまだ小さな子どもなら今日のようなことも起きなかった。しかし大学生ともなれば話は別です。周りの人間はそうは見てくれない。あの方のように、隙あらばあなたに取り入るチャンスを狙っているのです」 俺は返す言葉もなかった。 確かに荒井の言う通りだ。 しおりは俺の気を引こうと強引に俺を誘った。 その誘惑に負けてしまった俺が悪い、俺の未熟さが招いた結果なのだ。
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