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「金目当ての相手なら金で解決できるということです。あなたは将来のある身、スキャンダルで身を滅ぼされるわけにはいかない。そのために私が居るのです。あなたをお守りする手段はいくらだってあります。我々にできないことはない」
「えらく強気だな」
「倉田家に仕える者の宿命でございます」
ニヤリと笑う荒井を前に、俺は嫌と言うほど敗北感を味わっていた。
やっぱ荒井には敵わない、完全に俺の負けだ。
俺はグラスを手に取ると、ウーロン茶をゴクリと飲んだ。
恋愛感情を捨てるったってどうやって?
急にそんなこと言ったって俺だって困る。
大学生になってやっと束縛から解放された途端ダメだしなんて、無茶言うなよ。
俺は大きくため息を吐いた。
そんな俺を憐れむように、荒井が低い声で言った。
「恋愛をするなとは申しておりません。ただ感情を殺せと言っているのです」
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