親友 向井彬

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ある接待の席── 今夜俺は取引先の重役連中相手に酒を飲んでいた。 「本日は誠にありがとうございました。さすが御社の信頼度は申し分ない」 我が社の重役たちがこぞって相手を褒め称え、場を盛り上げていた。 「いやいや。それよりこちらにいらっしゃる副社長、実に頼もしい。社長であるお父様もさぞご安心でしょうな」 そう言って、俺の目の前にドンと腰を下ろした大柄な社長が声高らかに笑った。 もう何十、何百回と言われたセリフに内心うんざりしながらも、俺は澄ました顔で愛想をふりまく。 するとそんな和やかな雰囲気を壊すように、社長の怒鳴り声が響いた。 「ほら、なにぼーっとしてるんだ。副社長のグラスが空っぽじゃないか」 社長は隣にすわる自分の娘を叱咤し始めた。 おいおい自分こそ、こんな席に自分の娘を連れてくるなんてどういう了見なんだ? 思わずそう突っ込みたくなるのを、俺はぐっとこらえた。
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