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社長の娘は「亮子」と言った。
随分社長ご自慢の娘らしい。
歳は俺と同じくらいだろうか、髪を肩までのばし、体つきは父親に似ず華奢だった。
今日の接待に父親と同席したということは、その答えはおのずと見えてくる。
おそらく俺に取り入ろうって魂胆だろう。
大事な接待の席である以上逃げ出すこともできない俺は、談笑しながら二人の様子をそれとなく窺っていた。
「どうぞ」
亮子はか細い声で俺の前にグラスを置いた。
「どうも」
俺は多くは語らず、彼女に向かって少しだけ微笑んだ。
すると亮子は、たったそれだけで頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯いた。
はははっ、これは純情を絵にかいたような女だな。
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