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振り向くとそこには、俺の様子をうかがうように社長の娘亮子が心配そうな表情を浮かべ立っていた。
「亮子さん、どうかなさいましたか?」
ここはあくまでも紳士的に、俺のイメージを崩さないよう優しく亮子に声を掛けた。
「いえ、副社長がなかなか戻ってらっしゃらないので少し心配になったものですから」
亮子は俺をいかにも心配していたことを強調したいらしい。
言葉の端々にそれが垣間見られ、俺はかすかに憤りを感じていた。
しかし俺はそんな態度は微塵も見せず、
「大丈夫ですよ。あなたにご心配をおかけしたのなら謝ります」
と言って彼女に軽く頭を下げた。
「そ、そんな謝るだなんて。心配したのは私の勝手ですわ。どうぞお気になさらないで」
亮子は大袈裟過ぎるほど両手をパタパタ振り、慌てて弁解した。
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