6339人が本棚に入れています
本棚に追加
追われると逃げたくなる、それが俺の習性のようだ。
「では、戻りましょう」
俺はそう言うと、亮子に近づき彼女の背中にそっと手をまわした。
そんな俺の行動をどう勘違いしたのかは知らないが、亮子は俺にこんなことを言い出した。
「あ、あのぉ倉田副社長。この後お時間ございません?」
「時間ですか?」
「ええ。もし副社長さえ良かったら、二人だけで飲み直しませんか」
亮子は大人しそうに見えて、やはりしたたかだった。
大胆にもこの俺を誘ってきたのだ。
いや、大人しいと言うのは彼女の演技、本性は大胆で計算高く、虎視眈々とチャンスを狙っていたのかもしれない。
そっちがその気なら相手くらいしてやってもいいが、いくら俺でも大事な取引先の社長の娘に手は出せない。
最初のコメントを投稿しよう!