親友 向井彬

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追われると逃げたくなる、それが俺の習性のようだ。 「では、戻りましょう」 俺はそう言うと、亮子に近づき彼女の背中にそっと手をまわした。 そんな俺の行動をどう勘違いしたのかは知らないが、亮子は俺にこんなことを言い出した。 「あ、あのぉ倉田副社長。この後お時間ございません?」 「時間ですか?」 「ええ。もし副社長さえ良かったら、二人だけで飲み直しませんか」 亮子は大人しそうに見えて、やはりしたたかだった。 大胆にもこの俺を誘ってきたのだ。 いや、大人しいと言うのは彼女の演技、本性は大胆で計算高く、虎視眈々とチャンスを狙っていたのかもしれない。 そっちがその気なら相手くらいしてやってもいいが、いくら俺でも大事な取引先の社長の娘に手は出せない。
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