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そんなことをしたら俺の将来は決まったも同然。
突如俺の脳裏に、社長の満足そうにほくそ笑む顔が思い浮かんだ。
それだけは御免こうむりたい。
俺はくだらない妄想をかき消すと、咄嗟に顔色を曇らせた。
「すみません。先程の電話で私はこれから社に戻らなければならなくなりました。あなたのような方のお誘いをお断りするのは大変心苦しいのですが、残念です」
目には目を、演技には演技だ。
これが大人の礼儀ってもんだろ?
そんな俺のセリフに亮子はがっくりと肩を落とし、泣き出しそうに顔を歪めた。
そんなやり取りを交わす俺たちに、突然秘書の荒井の声が飛んできた。
「副社長、お車をまわして参ります」
いつから俺たちの様子を見ていたのだろう。
荒井は平然とした態度で、俺に一瞬だけ目を合わせた。
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