親友 向井彬

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「おまえもあれこれ忙しそうだな」 そう言って、彬が俺の話題に切り替えた。 「なんだよ、人の顔をじろじろ見て」 彬と目が合い、憎まれ口を叩く俺。 何故だかわからないが、俺は彬の視線にひどく動揺していた。 「別に他人のプライベートに首を突っ込む気はないが、おまえは昔と変わらないって思ってさ」 「勿体つけずにはっきり言えよ」 「じゃあ言うが、おまえの女のことだ」 彬の口から「女」という言葉が出た途端、俺のグラスの氷がカランと鳴った。 その小さな音にさえ、俺はビクッと肩を震わせた。 「どうした?何かあったのか」 なにも答えない俺を見つめながら彬が尋ねた。
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