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そんな俺を静かに見つめながら、彬は話を続けた。
「今は親父の会社を手伝っているが、親父も回復に向かってる。そろそろ復帰できそうなんだ」
「そうか、それは良かった」
「だから俺は自分の夢だった会社を作ろうと思っている。もちろん千秋も連れて行く。そのために俺は千秋を育ててきたんだからな」
そう語る彬の目は、真剣でありどこか楽しげだった。
一方俺は、親友が夢を叶えることを誇りに思いつつ、またしても彬に先を越されてしまった敗北感をしっかと味わっていた。
彬のヤツ、千秋に対して本気なんだな。
俺と違って彬は真面目だから・・・・。
ふっと笑いかけたその時、俺は心に違和感を感じていた。
うれしさと羨ましさの中に、重くのしかかる痛く刺々しい感情。
言い換えるとするならば、それはまさに「嫉妬」と呼ぶべきものなのかもしれない。
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