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当時荒井は俺の教育係だった。
一回りほど歳が離れていた荒井を、俺は兄のように慕っていた。
なかなか頭の切れる男で、俺はこいつからいろんなことを学んだ。
そして幾度となく助けられもした。
だから俺の両親も、こいつにだけは絶大なる信頼をおいていた。
そんな荒井が、俺の教育課程終了とともに今度は俺の秘書となった。
現在は副社長としての俺の右腕、荒井は俺にとってなくてはならない存在だ。
「副社長、お楽しみのところ大変申し訳ございません。明日の朝のご予定ですが──」
けどこいつ、いつも一言多いんだ。
今でも俺のことを時々こうやって子ども扱いしてくる。
思い出し笑いして悪いか?俺がいつおまえに迷惑かけたよ?
俺はミラー越しに荒井をジロリと睨みつけると、傍にあった書類を手に取り、読むフリをして顔を隠した。
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