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ここにいる俺は、確実に静香を千秋の身代わりに抱いている。
欲情が高まれば高まる程、虚しさが押し寄せてくる。
目の前にいる静香に触れながら、千秋を感じてしまう自分が許せなかった。
─こんな関係はもう終わりにしよう─
静香だけでなく、俺はすべての女たちとの別れを決意していた。
一連の行為の後、絡みつく静香の腕を振りほどき、俺は一人ベッドから出た。
「どうしたの倉田さん?」
驚いたように静香が声をかけてきたが、俺は聞こえないフリをして服を着始めた。
「もう帰っちゃうの?嫌よ、もっと一緒にいたいわ」
甘えたような、それでいて寂しそうな声で、静香が俺を引き止めようとした。
しかし俺は冷ややかな視線を彼女に向けると、低い声で最後のセリフを呟いた。
「もう終わりにしよう」
静香は信じられないといった様子で目を大きく見開いていた。
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