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「タナカくん、自白したんですか?」
「まあお前が犯行の場所や、今まで謎だった殺人のトリックまで全部見抜いちまったからな」
ウゴはご機嫌だ。またアトマツリの手柄を横取りして上司に褒められでもしたのだろう。
「そういやよ。聞いたことなかったけどお前、何で犯人やトリックを知っているんだ? レイノーリョクってやつか?」
「そんなんじゃないですよ、ウゴくん。私は本来、名探偵だなんて呼ばれるべき人間じゃないんです」
アトマツリは苦笑いをした。彼はどうやら褒められることが苦手らしい、とウゴは認識している。
「謙遜はよせよ、お前が解決した謎は数知れずだ」
「いいえ、謙遜ではありませんよ。私は灰色の脳細胞も、助手のワトソン君もいません。ただ、読者(あちら)側だというだけです」
「灰色? ワトソン?」
「わからなくても大丈夫ですよ。さて」
「ん?」
「名探偵 皆を集めて さてと言い という川柳もありましたがね、どうせならとことんセオリーから外れてやりましょう」
ウゴは驚いた。アトマツリがあの生き生きとした顔をしていたからだ。何が起こっているのだろう、彼にはよくわからない。
「殺人は起こらず、主人公が謎だらけ、エセ名探偵がさてと言って締めくくる物語。素敵じゃありませんか」
アトマツリは一拍置いてにこりと笑った。
「さて、皆さん。どうでしたか? こんなものはミステリーではないと怒られてしまうかもしれませんね。しかしながらこれがこの物語なのですから諦めてもらう他ありません。それではご縁があれば、また……」
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