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アトマツリの目が輝きを帯びる。生き生きとした顔は魅力的で、いつものドロドロと腐ったような目とはほど遠 い。
「タナカくんはフリーター、この料亭も臨時のバイトですよね? そうして職場を転々としながら、自らの殺人衝動の赴くままに人を殺す。いやあ、清々しいクズですね!」
この顔が殺人事件の謎を解くとき限定でなければ、世の女達も放ってはおかないだろうに、とウゴは自分を棚に上げてそう思わずにはいられないのだった。
「テナックの残すメッセージ、《tnak》も暗号なんかじゃなく、タナカという彼自身の名前のことだったんですよ! ね、タナカくん?」
「…………」
ウゴは隠すこともなくため息を吐いた。世間では、カルト宗教組織の名前だとか、犯人からの重要なメッセージだとか、大騒ぎしているのだ。それが「タナカ」だと知ったら彼らは何と言うのだろうか。
「証拠はないですよね? それに、こんな警察が荒唐無稽な話を信じてていいんですか?」
「お前も棺桶探偵の名を知っているならわかるだろ? そんな言い逃れは無駄だ」
ウゴは隣のアトマツリがむっとする気配を感じたが、無視して言い放った。
「こいつは、全ての殺人事件の結末を知っているんだからな!」
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