神の御声は渡るのか、渡らないか

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遺族―――自分もそうだが、一族全員に礼をして席につく。 ひそひそと声がする。 「あぁ、あれが首謀者の――」 冷夜は眉を潜めた。 何よ、それ。 「確か、妹と―――」 「あぁ、だからよく似て。……穢れている」 いやいや、兄が皆殺しだし、私も箜兄に襲われたし。 冷夜は瞑目した。 あの惨劇『冷たい夜』は皆が痛みを抱え、擦り付け合っている。 隣の羽旭が手を合わせたまま、呟いた。 瞳は怖いほど、静か。 「擦り付け合って、なんて醜い」 ざわついていたのが一気に覚めた。 冷夜が瞳を見開いた。 尚も羽旭は続ける。 「私達は被害者よ。……あぁ、そう、産んだ私は憎んでいい。でもね」 羽旭の首にかかる鎖が揺れた。 「『冷たい夜』なんてふざけたネーミングは捨ててよ………!」 怒りの隠る声に冷夜が息を吸った。 「私の最後の娘を穢れた眼で見ないでよ!」 冷夜に視線が集まり、その場が凍り付く。 冷夜は静かにもう一回息を吸った。 「――………わたしは」 視線が熱を持ってる。私に罪を認めさせようとしてるのだ。 「兄に殺されかけた。だから私は、第二の『冷たい夜』を生みたくないし、それに――――」 よく言えたものだ。 羽旭が自慢気に笑う。
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