神の御声は渡るのか、渡らないか

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「私は私を壊した箜兄を憎んでる」 それまでの平穏な生活を冷夜は望んでいた。 羽旭が遙斗、と呟く。 お前にそっくりな娘だな。気の強い、芯の通る娘。 だから、と冷夜は叫ぶ。無知は楽で簡単だが実に哀しい。 もう、子供だ、と無知ではいられない。 「私が知らない、皆の『冷たい夜』」 胸に手を当て、冷夜は朗々と言い放った。 「私に全部、預けて!」 数分後、まだ半信半疑である皆の途切れ途切れな『冷たい夜』は一貫してこうだった。 獣の、戦争。 しかも一方的な。 冷夜は『冷たい夜』を聞きながらふと、箜はもう二十歳に近いのだ、と思い出した。 あれは、私が少し幼い頃。 あぁ、もう三年も経つのか。 ☆
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